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みえ木造塾2011 第1回講義記録 日時 平成23年6月11日(土)午後1時30分〜午後4時30分 場所 松阪地区木材協同組合 木の情報館(ウッドピア松阪内) 講師 野沢正光氏 テーマ 「環境と共生するこれからの木造住宅」 〜サスティナブルでパッシブな家づくり〜 (有)野沢正光建築工房代表の野沢氏はOMソーラー実践者としても著名な建築家。1970 年代から奥村昭雄氏らと共に太陽熱を利用したパッシブな家づくりを試みておられる。今回の講義は東日本大震災からちょうど3ヶ月目ということもあり、数万に及んだ犠牲者への黙祷から始まった。講義の始まりに「三重は遠いせいもあって電気も煌々とついているしのんびりした感じですね」と仰ったのが、東京との意識差を思い知らされ印象深かった。「木造ドミノ」や伊賀・愛農高校の減築耐震工事で、三重県とのご縁もできつつある。 講義概要 講義は前半の環境やエネルギーに関する話と、後半の設計事例紹介とに大きく分かれた。 ●「環境の時代と建築」 建築とエネルギーの関係は、人類が火を使い出してからの50万年の再生可能な「開いた系」としてのエネルギーと、産業革命後の200年の「閉じた系」の二つに分類されよう。この地球資源をひたすら消費する閉じた系を重要視し依存してきたのが現代社会で、フラーの著書「宇宙船地球号」が警告している。が、その中でも産業革命下のイギリスでナショナルトラスト運動が興り、今やイギリス一の大地主となって自然環境を保護維持しているような流れも一方にある。このバランス感覚が大事で、閉じたエネルギーの稀少化に伴いコージェネの地域化や小型水力発電、廃熱利用等、開いたエネルギーの再発見が試みられており、全国で実現化されている。ゼロエネルギー住宅は木造でなければならずバイオマスや地域エネルギーの活用も重要であると説かれた。 ●設計事例紹介 25年前の奥村氏との共同設計による「阿品土谷病院」。閉じた系に関してはコージェネの高効率化を図り、開いた系については外気導入や屋根集熱を採用した。また「いわむらかずお絵本の丘美術館」「長池公園自然館」「バンビバイリンガル幼稚園」「世田谷の経堂」等の紹介。木造ドミノ住宅については東京都東村山での木造のスケルトンインフィルの試みやウメダハウジングのモデルハウス紹介もあった。愛農学園農業高校での再生工事後の各温度推移の説明によってパッシブで快適な室内環境を維持できることをも力説された。藤森照信氏によれば木造のモダニズム住宅が存在するのは日本だけだそうで、これも日本特有の優れた大工技術があってこそ。大工のやる気を起こさせるような設計が必須だろう、とのコメントが印象深かった。 (大森尚子) |
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みえ木造塾2011 第2回 講義記録 日時 平成23年7月2日(土)午後1時30分〜午後4時30分 場所 松阪地区木材協同組合 木の情報館(ウッドピア松阪内) 講師 生川 朋氏 テーマ 「規矩術を語る さしがねの極意」 〜さしがねの由来〜 |
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生川朋氏は(株)生川工務店の代表取締役で現代の名工(卓越技能者)である。
数々の技術検定委員・競技委員に就任され、現在も技術検定委員・競技委員・ものつくり大学特別客員教授として大工技術の継承に貢献している。
三重県にも技術検定試験の委員として何度か足を運んでいられる。 講義概要 講義はさしがねの由来から使用方法・身近な寸法比等ユーモラスで難解な?講義であった。 さしがねは今から2700年ほど前に中国で生まれ、四天王寺建設の際中国の番匠から日本に渡り、法隆寺建設時聖徳太子が5種類の中の1本を選んで使われたのが、現在のさしがねであるといわれる。1500年代頃から西洋文化とともにダビンチの三角関数を利用した測定器も伝わり、西洋・東洋が融合され匠の技を生かした現在の美しい日本建築がある。 さしがねは、優れた計算尺であり表には正寸法、裏には裏目(正寸法を√2倍させた寸法)丸目(直径の円周)が記されている。さしがねの長手方向は1尺5寸8分の目盛があり、当時の1間(6尺3寸2分)の4分の1寸法で、短手方向は7寸5分の目盛が記載されている。短手の寸法勾配はもっとも美しい寺社建築の引き渡し屋根勾配だそうだ。 これらをもとに作図実習した。殳、勾、玄の関係を知り、屋根勾配の出し方、隅勾配の出し方を作図し、また用紙の寸法比(短手寸法の√2倍が長手寸法)も教わった。 また、西洋の黄金比(1:1.618)も身近に存在し、ミロのビーナスが有名であるが、名刺、たばこの外箱などがあげられる。星の中の五角形の美しい黄金寸法比も名刺を使用して説明頂いた。その他、正三角形の寸法比率、六角形の寸法比率も教わった。 後半再度さしがねを使い、振れ角度の垂木の寸法算出の作図を教わったが、少々難解で塾生も四苦八苦して作図に取り組んでいた。八角形の簡易な寸法作図を教わり実施作図は終了。最後に木のやさしさが生み出す健康とエコロジーから、人間に大切なブナの木は樹齢200年ほどの大木になると1本8トンの水を溜める自然との関係の大切さを学んだ。 今回の講義で生川先生の特に印象に残った言葉が 「出会いを大切に 感謝」「特技を生かす 無理せず1つ1つ生かす」というお言葉だ。 |
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みえ木造塾2011 第3回 講義記録 日時 平成23年8月6日(土)午後1時30分〜午後4時30分 場所 松阪地区木材協同組合 木の情報館(ウッドピア松阪内) 講師 古川保氏(すまい塾古川設計室(有)代表取締役) テーマ 「古川保の伝統的構法万歳!」〜伝統的構法が山を救う〜 |
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<オプション企画 みえ木造塾意見交換会> 午前にオプション企画でみえ木造塾意見交換会をおこないました。 内容は木造塾の塾生が現在取り組んでいる活動や仕事内容の紹介を写真にしてプロジェクターで各スライドで発表しそれを元に意見交換をしました。 講義概略 伝統構法から学び、復活させていくことを、伝統構法の構造の仕組みや建築基準法、現代のまちがったエコや節電に対する批判的意見なども交えながら膨大な量の写真や資料とともに熱く語ってくださった。 ○建築文化の消滅 H19年6月に施行された基準法改正により、伝統構法の住宅が建てづらくなった。一般の木造住宅に比べ伝統構法の家は審査料21万円の追加と35日もの審査期間がかかるため伝統構法の家を建てる人が減ってしまった ○どうして伝統的構法の家づくりにこだわるのか 手刻みの工法、柱勝ちの工法、木組みの工法の良さを生かせること、職人の技術低下への歯止め、土に還る材料で作り建築廃材を減らすこと、石油エネルギーを使わないこと、職人の雇用創出等の日本の産物を生かせる利点がたくさんあるため ○民家から学ぶディティール 欄間、無双窓、地窓、高窓、網収納、杉材、藁畳、土壁、漆喰、土間、障子、深い軒、石場建て等の風や湿気、シロアリに対応したディティールがある ○そもそも伝統構法とは 検証委員会の見解では、濃尾地震以前の建築手法を伝統構法という 伝統構法は剛より柔の家づくりであり、いわゆる制震構造である。一時的な強度には剛構造にかなわない点もあるが、地震耐力という粘り強さの点では柔構造は決して劣ってはいない。 ○性能から伝統構法を評価する 伝統構法は地震に一番強い構造でもないし、断熱性能が一番であるわけでもない。一か所だけみたら性能は確かに低いかもしれないが、生産時にエネルギーは使わない、山が潤う、職人に仕事がある、長持ちする、処分時は土に還る、環境性能はほどほど、など全体をみたらさまざまなものとのバランスがとれていて良いのではないか ○民家再生には建築確認はいらない 住宅には「過半の模様替え」の規定はないので増床がない限り建築確認は不要である ○基準法対策・「木材の防腐・防蟻工事」の義務化は大きなお世話 基準法に耐久性のためとした、「基礎は30p以上の高さにしなければならない」という記述があるため、基礎が立ち上がり、床下が密閉され、床下の木材が腐ることが多くなった。その上、住宅の断熱化の促進でシロアリが日本全土に広がってしまった ○木材のプレカット化が日本の山を駄目にする 外材が安いという理由ではなく、建築工法がプレカット化されたことによる含水率の低い木材への需要が高まったことにより、含水率の高い日本の山の木が売れなくなってきている。というのも、プレカット工法では木材を完全乾燥しないと軸組みの組み立てができないのである。伝統構法による手刻みの場合、含水率がほどほどの日本の木の方がよく、大工の雇用や技術低下防止につながる ○含水率検査が、CO?排出を増やす 完成時の推定含水率で検査をすべきであるのに、材料搬入時の含水率で完成時に必要な含水率を求めるため、過剰な人工乾燥が必要になっている ○建築廃材 サイディングと石膏ボードの多量使用を国は推薦しているが、将来の処分場の事なども考えて改めるべきである。新品の石膏ボードに処分費用を上乗せすることや、木造の燃え白設計の適用範囲を大幅に広げていかなければならない ○省エネ住宅の過ち オール電化、高気密、高断熱の家は全館冷暖房が基本であるため、結局エネルギー総量を増やしていることになる。次世代省エネ基準に特別減税があるが、こたつと薪ストーブの家も減税したらどうだろうか ○長期優良住宅の過ち 長期優良住宅の「長持ちするいい家」の認定条件に省エネ基準4を満足するとあるのはとてもおかしな話である。また構造基準も筋交いと合板が基本であり、これらを使わなくてはいけなくなっている。さらに、省エネ基準4というのは沖縄にまで高気密高断熱仕様を強いるとは温熱区分もいい加減である。 以上の内容や、さらに深い事柄を、写真、イラスト、さらにユーモアを交え熱く語っていただきました。私自身あまり深く考えたことのなかった話の内容でしたので、良い刺激になりました。ありがとうございました。(文責:武居梓) |
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みえ木造塾2011 第5回 講義記録 日時 H23年10月01日(土) 午後1時30分〜午後4時30分 場所 松阪地区木材協同組合 木の情報館(ウッドピア松阪内) 講師 高橋昌巳氏(潟Vティ環境建築設計) テーマ 建て主が中心となる直営方式の家づくり |
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講義概略 1. 今の仕組みへの疑問 知識ばかりが氾濫する時代に、住み手は自分の家がどんな材料を使ってどんな風に作られているかを見る機会が少なく、工事にもっと参加できるような場面を作りあげていくことができないか。また、建て主、設計者、職方、素材業者などの役割の固定化 と責任の放棄が安易な保証・保険制度を生むきっかけになったのではないだろうか。 2. 実現したい家づくりの仕組 ・使用材料や作業工程、それぞれの職人の顔が建て主にも分かるようにする。 ・建て主は現場確認と維持管理、設計者は安全性と景観意識、職人は使用素材と納ま りといった責任をそれぞれが公平に負担する。 ・依頼する・依頼されるという意識が一つになり目標を共有することの出来るチーム ・ゆっくりと丁寧に楽しみながら、記憶に残る家づくり。 3. 25年続けてきてわかったこと ・建て主が工事に参加することで、造り手の苦労がわかってもらえるようになった。 ・納まりを詰めて施工しても自然災害に完璧に手立てを施すことは難しいことである。完璧を目指すよりも、建て主を交えたチームで家を造り、守っていくという考え方が長寿命住宅には無理がない。 ・建て主直営といえども、住み手の一人勝ちでは関係者全員から敬遠されて完成時に 付合いが消滅する。この仕組みには向かない人もいる。 4. 自分自身の今後の課題 ・職人や素材業者が段取りと手間が想像できる設計図書を作成するのが設計者の仕事。 職人や素材業者から学び、お互いに求めているものを伝える努力が必要。オフィス を出て材料や素材に直に触れる体験を持つこと。 ・使用する素材の本質を理解していなければ、素材を活かす設計は無理。どのように 表現し、いかに実現させるかを考え続けることが監理と管理の本質。 ・施工マネジメントは担当者の人間的な資質が問われるので簡単なことではない。職人がいかに気持ちよく仕事に取り組める環境を提供できるか。知識や経験も必要だが、中立的な立場で筋を通すことも大切である。 高橋氏の若い頃の失敗や理想と現実のギャップなどを経験しながらも25年間にわたって続けてきた実務を基に話されているので、実に説得力があり、興味深い講義となった。 |
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